9月7日(日):積み重ねから見えてくる事

① 立ち止まることが前進になる瞬間

私たちは日常のなかで、常に「やるべきこと」に追われています。仕事、家庭、学び、SNS、通知。休む暇なく走り続けることが、いつの間にか「前進」だと信じ込んでしまう。しかし、本当にそうでしょうか?

全速力で走ると景色がぼやけ、声が聞こえなくなります。人生でも同じで、走り続けていると「自分は今どこに向かっているのか」を見失いがちです。止まることを弱さだと思う人も多いですが、実際には立ち止まることでしか見えないものがあります。静けさの中でしか聞こえない「心の声」や「自分への問い」がそこにあるのです。

迷ったとき、誰かの意見に流されそうなとき、道が正しいか分からなくなったとき――勇気を出して立ち止まり、「これは本当に私が選びたい道なのか?」と自分に問う。その時間は決して無駄ではなく、むしろ自分の足で進むための準備です。

前進とは「進むこと」だけではありません。内側を見つめ、心を整え、価値観を再確認することも立派な前進です。周囲の成果やスピードに流されそうになったときほど、「私は何を大切にしていたんだろう?」と問い直すことが大切です。立ち止まることは取り残されることではなく、自分の軸を取り戻すための大切な一歩です。

そして不思議なことに、立ち止まった人の方が、再び動き出したときには速く、強く進めます。迷いがなく、エネルギーが集中するからです。だから今日、ほんの数分でもスマホを置き、深呼吸をしてみませんか?立ち止まることは、進むための選択です。

② 失敗が未来の布石になるとき

「失敗しました」と聞くと、多くの人は肩を落とします。予定通りに進まなかった、思い描いた結果に届かなかった――その瞬間は「損失」にしか見えないものです。けれど振り返ってみると、あの失敗があったから今の成功につながった、という経験はないでしょうか。

失敗は単なる「つまずき」ではなく、未来の布石になる可能性を秘めています。ゲームを例にすると分かりやすい。プレイヤーは失敗を重ねることで敵の動きや仕掛けを理解し、次にどう動けばいいかを学びます。失敗は「経験の設計図」なのです。

ただし大事なのは「記録」すること。原因や改善点を言葉に残さなければ、失敗はただの苦い思い出で終わってしまいます。記録された失敗こそが、未来の判断を精度高くしてくれるのです。さらに失敗は「選択肢を広げる力」も持っています。この道が違うと分かれば、新しい道を探す余地が生まれる。成功しか知らない人よりも、失敗を知る人の方が広い地図を持っているのです。

もちろん、失敗が自動的に布石になるわけではありません。そこには「姿勢」が必要です。失敗を「終わり」ではなく「途中」と見ること。無能さではなく挑戦の証と捉えること。恥ではなく経験として共有すること。その受け止め方次第で、失敗は未来の資産に変わります。

未来の視点で振り返ると、失敗は「必要な一歩」だったと理解できます。就職に落ちたから別の道を選び、そこで縁が生まれた。投資で失敗したからこそリスク管理を学べた。失敗を布石に変える最大の武器は、未来から逆算して見る視点なのです。

今日の失敗が、明日の自分を強くする。そう信じられたとき、失敗は恐れるものではなく積み重ねるべきものに変わります。

③ 共感を求めすぎると、自分の声が聞こえなくなる

「誰かに共感されたい」――それは人間らしい自然な欲求です。自分の考えや気持ちに「わかるよ」と返してもらえたら、心は軽くなり、前に進む力になります。共感を求めること自体は悪いことではありません。

けれど、それが強すぎると危うさが出てきます。「反応される言葉」を優先しすぎると、自分の本当の声が少しずつ遠ざかっていくのです。発信するときに「この言い回しならウケるかな」「この話題の方が共感されやすいだろう」と考えすぎると、最初は小さな違和感でも、次第に自分の本音がかき消されてしまいます。

本当に伝えたいことは、最初は共感されないかもしれません。モヤモヤや違和感のように形になりにくい思いは、すぐに理解されることの方が少ないからです。けれど、それを無難な言葉に置き換えてしまったら、結局「自分の声」を失ってしまう。

共感は「結果」であって「目的」ではありません。本来、発信とは「自分が何を感じ、どんな言葉を持っているか」を確認する行為でもあります。だからこそ、共感されなくても書く価値のある言葉があるのです。

静かな夜にふと浮かぶ言葉は、誰かに届けるためというより、自分にとって必要な言葉であることがあります。つまり「他者に理解されたい」と思って書いた言葉が、実は「自分を理解したい」という心の声だったりするのです。

だからこそ、共感よりも「自己との対話」を優先することが大切です。誰にも届かなくても、自分には響く言葉を書く。それが積み重なったとき、自然と共感が生まれる瞬間が訪れる。

共感を求めることは人間らしさ。でも、それが強すぎると自分の声を見失う。だから今日も、誠実に「私はこう感じている」と綴ること。それが結果として共感を呼び、そして何より自分自身を支える声になるのです。

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私たちは「走り続けること」こそが前進だと思いがちです。けれど立ち止まることで、自分の声を聞き、納得できる方向を選び直せます。失敗もまた布石となり、記録し姿勢を整えることで未来の力に変わる。そして、他人の共感を追いすぎれば本音はかき消されるけれど、自分の声を大切にすることで、本当の意味で人とつながれる。前進とは、止まる・失敗する・自分に耳を澄ます、その積み重ねの中にあるのです。

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